結局、良いめがねを買うには良いめがね屋と出会えるかどうか
今年は12連休という長い冬休みをいただき(職場の皆様ごめんなさい)、長期で東京に帰っています。
せっかく時間が多くあるので、前から一度ちゃんと見てみたかった仕事の延長で知り合いになった東京・自由が丘のめがね屋さんにお邪魔してみました。
■リュネット・プラス(東京都目黒区・自由が丘)↓↓↓
なかなか普通の店では置いていないような総量の少ない厳選ブランドが数多く置いてあり、日本製のめがねも多いです。
取扱いブランド↓↓↓
さて、今日書きたいのはそこの日本製(福井製)めがねが良いだとかそういう話ではなく、
【めがねを買うときにはちゃんとしためがね屋と出会えるかどうかが非常に大切】
ということです。選ぶめがねそのものの質が良いか以前の問題として。
今回リュネットプラスさんで、「ここは素晴らしいめがね屋だ!!!」と感動したと同時に私自身も勉強になったポイントがいくつかあります。
■その1
「メンテナンスが神対応!」
来店時に私がかけていたセル枠のめがね(リュネットプラスさんで買ったものではない)について、店員さんからご提案いただき無料で見ていただき、洗浄はもちろんのことより良いかけ心地のために調整をし直してもらったのと、だいぶ使い込んでいた結果全体的に傷やくすみが出てきていた所を店内のバフ研磨でピカピカに磨き直してもらえました。
繰り返します、ここで買っていないめがねです、無料です。
(ちなみに修理や、その人に合わせた鼻パッド部分の修正も対応してくれます。)
結果、まず見た目について買った当初同様(むしろある意味それ以上に)セルのきれいな艶がしっかりと戻ってきました。(ちなみに磨き直してきれいな艶が戻るものはそのめがね枠が元々しっかり磨かれている証です)
また、元々私が所有するめがねの中でもかけ心地が良かったものがさらに完璧になりました。
やはりめがねはかなりの頻度で長時間かけるものなので、メンテナンスが大切です。
単にめがねの洗浄くらいであれば(セルフの洗浄サービスなど含めて)やっているところは多いですが、長期間快適に見た目も良く使い続けるためにはそれ以上のしっかりとしたメンテナンスが必要です。
めがねは買いっぱなし、使いっぱなしではだめなんです。
生活の一部になり、生活を支えているものでもあるわけです。
何か良い例になる他の製品はないかと考えてみましたが、めがねはなかなか特殊な位置づけのものなので例えが見当たらないですね、しいて言えば「髪」とかに近いかもしれないですね。製品ではないですが。
定期的に洗ったり、傷んだら修復する必要があります。そしてその人の見た目をも大きく左右しますし。適切に整えていないとなんか不快感があったりしますしね。
リュネットプラスさんは自分たちが売ったものかどうかなど関係なく、
「めがねを使う人たちを支える整備士」
という気概を持ってやっていらっしゃるお店でした。
■その2
「作り手のこだわりや技術・想いを知っている、語れる!」
これは私が現在仕事をしている「めがね産地」にも大きく関わるポイントですが、リュネットプラスさんは自分たちが仕入れて扱っている製品について、そのめがねフレームの作り手がどういう人たちか、どこにこだわっていて良さ・特徴があるかということをしっかりと把握されていて、私が手に取ったフレームについて一つ一つ本当にきちんと説明してくれます。
経験上、これができるめがね屋は意外に非常に少ないのです。
なんとなくぱっと見てわかるデザインのポイントや売れ筋は教えてくれても、特に量販店などではそれ以上のことは全く語れません。
リュネットプラスさんは本当に自分たちが扱うめがねたちへの愛に溢れたお店だと感じ、めがねを見て話しを聞いているだけで楽しく過ごせるお店でした。
■その3
「そのめがね枠の良さを活かすレンズ選び!!」
ほしいめがね枠を選んだら、次に入れるレンズを選びます。
このレンズ選び、通常必ず言われるのが
・レンズの厚み(屈折率)
・レンズの歪み(球面・非球面設計)
これをどうするかということです。(他にも要素はありますが、代表的な要素として。)
厚みの方は、同じ度数のレンズでも屈折率が大きいもの選べば薄くできるので、度数が強い人は少し予算を追加して薄くした方が良かったりするわけです。
そして今回私の中で新しい発見だったのは歪みの方です。
通常、多くの店では見え方の歪み(レンズの周辺部における歪み)がより少ないとされる両面非球面レンズ(値段も通常こちらの方が高い)の方が「良いもの」として勧められます。
ごく単純に言うと、非球面レンズは名前の通りレンズが球面でなく比較的平らにできています。逆に球面レンズは球面でありカーブがついています。
実は今回私は気に入った一本を見つけてしまいリュネットプラスさんで一本購入することにしたのですが、ここでは、単純に上述のような勧め方ではなく、私が選んだフレームのデザイン(フロントのカーブ具合)を考慮した上で、そのデザインを損なわないカーブのレンズ(片面非球面・確か4カーブ)を提案していただきました。
要は、フレームのデザイン自体がある程度カーブがあるものに対して平らな非球面レンズを入れると、フレーム自体を多少なりとも変形させてしまい負荷がかかるとともにデザイン・見た目が変わってしまうというわけです。
フレームよって程度は違いますが、真っ直ぐ平らではなくカーブがついている↓↓↓
確かに、フレームのカーブ(曲がり方)が少し変わると本当に思っている以上にフレームの印象が変わってしまいます。そしてめがねなので、顔の印象もかなり変えてしまうわけです。(経験済み)
つまり、自分が「これだ!」と思って選んだフレーム、自分に似合っていたフレームが、いざレンズを入れて手元に届くときには少し違うものになってしまう可能性があります。
そこで今回は、私くらいの度数(-3.5)であれば歪みの影響も少ないということも考慮の上でフレームのカーブを極力変えない片面非球面レンズを提案していただいたわけです。
加えて、店員さんがおっしゃっていたのは
「このフレームの作り手がどれだけ考えて、想いをもってこのデザイン・形にしたかを知っているから、それを小売店側としてできる限り崩さないように仕上げてお客様に渡していきたい」
ということでした。感動しました。
今まで両面非球面レンズを提案されたことはあれど、まさかそれ以外を一番の推奨品として提案されることがあるとは思っていませんでした。
もちろんレンズ選びはその人の目の状態(視力など)によって何が良いかが変わるものなので
「今回のような片面非球面を提案してくるめがね屋が良いめがね屋だ!」
などと一概に言えるものではない上で、
その人の目の状態だけでなくフレームのデザインを最大限保ちその人が気に入った一本がそのまま仕上がるように、作り手の想いも届くような提案ができるめがね屋は絶対良いめがね屋です。
逆にその人の顔に合わないめがねフレームを選んだりフレームに合わないレンズを入れてしまい、後から無理やりフレームの形を変形させることでそのめがねフレームの元々の形・デザインの良さや強度などを台無しにしてしまう場合が、量販店に限らず専門店などでも残念ながら少なからずあるそうです。
■その4
「最大限、見やすいめがねに!」
そもそも多くの人がなぜめがねをかけるか、「視力を矯正」して日常生活を快適にするためです。ここが最大の機能になります。
その補助としてかけ心地や見た目のデザインがあります。
つまり、その人に合った正しいレンズをめがねフレームに適切に装着することにめがね屋としての一番重要な役割があります。
具体的には視力測定や顔に合わせためがねレンズの加工の適切さです。
この部分は私自身まだ勉強中なのであまり網羅的には書きませんが、一つだけ良いめがね屋の具体項目例を書きます。
実はめがねのレンズには、レンズ全体の中でその度数通りしっかりと見える場所はたった一点しかありません。これは光学中心と呼ばれます。
この光学中心が「両目ともに」使い手の黒目の真ん中にきていないと、本来見たい視力と目の前のレンズの部分がずれてしまうので自覚があるかはさておき不快感が生まれ、眼精疲労の原因になるわけです。
そして、非常に残念ながら、人間の体は左右対称にできていません。
試しに鏡の前で顔の右半分を隠してみた自分と左半分を隠してみた自分を見比べてみてください。
もはや別人のような場合すらあります。(ちなみに私は顔の左半分の方がよりイケメンだと思っています。)
ということは、顔の真ん中、中心線からの右目と左目の距離も違い、高さも違うわけです。(ほとんど同じ人もいますが。)
つまり、本来であれば当然めがね屋がめがねのレンズを加工する際にはその使い手の右目と左目の位置を測って、そこに光学中心がくるように加工してめがねを仕上げるべきなわけです。
が、しかし、非常に非常に残念ながら、特に素早くお渡しする量販店などの多くでは簡易的に右目と左目の距離だけ測って左右それぞれの差異は考慮せずレンズを入れます。
結果、本来より少し見えづらい、そして疲れるめがねとなります。
もちろん、リュネットプラスさんではしっかりと左右の目の位置を測っていただけました。
以上が、良いめがね屋さんに行ってみて改めて感じたポイントです。
私も仕事柄、そして実家柄、めがねの小売店はけっこう回っていますしめがねも10本ほど所有しているわけですが、こんなに良かったお店はなかなか無いです。
今回の体験の中から改めて強く思ったことは、使い手がめがねを選び、買うのはめがね屋さんであって、結局そのめがねフレームがどんなに良いものだろうとそれが活きるかどうか、真にお客様のためになるかどうかはめがね屋さん次第だということです。
そしてなかなか上述のような知識が消費者には行き届いていない中で、わかりやすい安さや早さばかりを目立たせたような店ばかりが流行っています。(これはここ20年の日本の不景気も影響していますが。)
ちなみに、私は前職は不動産業界関係にいたのですが、この構造は不動産業界ともとてもよく似ています。
住まい(めがね)を選ぶ際には、専門性が高く買い替え頻度が低い商材ゆえに本当に必要な情報や正しい情報が消費者に十分に届かず(=情報の非対称性)、見せ方がうまかったりずる賢い不動産屋(めがね屋)ばかり儲かり、業界全体が悪循環になりやすいということです。
ちなみに友人からたまに
「引っ越そうと思ってるんだけど、良い物件見つけるコツは何か」
と聞かれると私は必ず
「良い不動産屋を見つけること」
と答えますが、めがねについても私の回答は全く同じ(良いめがね屋)ものになります。
そのようなことを考えながら、改めて本当に良いものを作っている人たちや正しいことをしようとしている人たちの力になれることをしていきたいなと、良いもの・正しいことこそ評価され伸びていく仕組みをつくっていきたいなと強く思います。
その一つとして、これは前々からずっと考えているのですが、そして完全に前職の経験から来ている発想ですが、
「良いめがね屋を探せる情報ポータルサイト」
でも作れないものかと思っています。
ちなみに不動産のポータルサイトは例えば以下(私の前職)↓↓↓
良いめがね屋の基準などなど諸々難しいことはありますが、消費者が
「良いめがねをほしいがどこに行くべきかわからない」
といったときにこれは本当に必要なものなのではないかと、本気で思案中です。
(現在の組織は直接その領域に手を付けるべきではないためやるなら個人的に、別組織などで。)
結果的に、ちゃんとした良いめがね屋が伸びれば、増えれば、そういうめがね屋は自然とちゃんとしためがねフレームを扱い、価格や取り扱いも適正に販売していってくれるはずなので、良いもの(めがねフレーム)を作っているものづくり企業も儲かるようになっていくわけです。
まさに好循環。
とりあえず、上記のような話も含め、そしてよりめがね産地のものづくりに対して直接的な話も含めて、2017年は2016年に暴れまわって築いた土台をもとに、一層エンジン全開でいきます。